省力化投資補助金を活用しやすいものにするために

 今年新設で注目されていた経産省中企庁が主導する省力化投資補助金の第1回公募が6月25日からスタートする。今日はこの補助金制度を一層よいものとするために何が必要かを提案したい。

 いわば、事業評価のPDCAサイクルでいえば現状の制度C(Check)、または問題点をフィードバックした後の制度立案P(Plan)に該当する部分である。

 この補助金は、IoT、ロボット等の汎用品をカタログ選択式で簡易に導入できるという触れ込みで、当初の予定では3月中に公募要領公開、早ければ3月末~4月中にも公募が始まると言われていた。一説によれば製品カタログの目標値は、カテゴリ登録数は300、カタログ搭載製品数はカテゴリ数×100という制度設計と言われていた。

 しかしである。いざふたを開けてみれば製品登録が大幅に遅れた。現状では製品カタログに掲載されている製品カテゴリ数はわずかに12、カタログ搭載製品数は清掃ロボ1、配膳ロボ2、無人搬送車1、スチームコンベクションオーブン16、券売機6、合計26製品を数えるにとどまっている。

 このような低調なスタートとなった原因は大きく分けて2点あるあるように思う。まずは、製品カテゴリ登録で工業会からの申請を必須としたことにより、工業会がカテゴリ登録を行わなければいくら素晴らしい省力化製品が世の中に現存しても製品登録が出来ないスキームとなっていることである。

 実は、経産省系の別の補助金だが、弊社で昔、工業会に準ずる国内元締めの業界団体に対して、当該業界が補助金事務局指定の成長産業に認定されるように申請してもらえないかと依頼したことがある。しかし、その回答は実につれないものだった。業界団体に年会費を収めている所属会員企業からの依頼であれば検討するが、そうでない場合は事務負担が増えるだけで業界団体としてまったくメリットがない。赤の他人の補助事業者の申請便宜ために骨折るつもりはまったくない、というのである。

 このように、補助金スキームに工業会を絡ませると、非常に多くの場合、工業会側としては、少なくとも会費を払っている企業からの依頼でなければ全くカテゴリ申請に動く気がないというのが実情であると思う。工業会からの製品カテゴリ登録数自体がいまだ12しか届いていないのがその証左である。本来は、中企庁担当者がスキーム設計時に工業会側にヒアリングや意見聴取・意見募集を行うなど、念入りに取材しておくべきであったように思う。

 また、工業会を絡ませるデメリットとして、製品の属する工業会がどこに当たるのか判然としない製品は、そもそもカタログ掲載の余地がないという問題点もある。

 その最たる例が、ドローンである。ドローンは空の産業革命の担い手と期待されている。(航空法上は同じカテゴリである空飛ぶクルマを除くと)3D航空測量、目視点検、空撮、物資輸送、植生調査、薬剤散布、警戒監視等、幅広い事業目的での活用が期待されている。予めプログラムした飛行経路で自律飛行し、目視外飛行能力もあり、まさしく飛行するロボットと親和性が高く、省力化という補助金の目的にはうってつけである。

 しかし、ドローンはこれら目的別のアタッチメントおよび装置(つまり、目的別のペイロード)を搭載して初めて役に立つ製品となるのであり、アタッチメントなしのドローン単体では趣味のラジコンと大差なく、ほとんど価値はない。

 例えば3D航空測量にドローンを使いたいという場合、工業会は計測・測量系の工業会なのか、航空機系の工業会なのか、はたまた建設業関係の工業会なのか、どこがカテゴリ登録申請すべきかは判然としない。また、目的別の工業会それぞれで申請すべきとすると、同じドローン活用なのに目的別のカテゴリ登録がなされることになり、補助事業者が複数のアタッチメントを購入したいと考える場合、探しずらく、かつ同時申請しずらいと思われる。

 改善策としては、工業会からの製品カテゴリ登録スキームをなくし、製造事業者・販売事業者側から直接、カテゴリ登録申請が出来るようにした方がよいのではないか。その際に、現状工業会側に立証責任が課されている省力化指標等の事項を製造事業者・販売事業者側が自ら立証するようにすれば済むだけの話である。具体的な製品の各種性能・諸元データは製造者が持っているので、むしろその方が立証はしやすいだろう。

 次に、低調スタートとなっている原因の2点目は、販売事業者が補助事業者と共同申請するスキームが取られており、販売事業者も補助事業者の事業計画書の内容に責任を負わせている点である。

 販売事業者側としては、当該販売事業者が関与した補助事業者の多くが補助事業実施後の定期報告で計画未達が多発した場合、販売事業者登録を取り消す場合があるとされている点が大きな負担になっているものと想像する。

 販売事業者は販売が事業目的なのであって、補助事業者の事業計画書の作成能力は概して持ち合わせていないケースが大半ではないかと思う。共同申請するスキームは維持するとしても、補助事業者の計画未達によって販売事業者の登録取消を行うというはやや厳しすぎるのではないかと感じる。

 今後、この補助金をより活用しやすいものとし、もって国のDX政策を推進するために、早急にこの2点を改善することを提案したい。いわばカタログ充実のボトルネックになっているこの2点を改善しさえすれば、当初の計画目標通り、今後爆発的な製品登録が進むのではないだろうか。今後の経産省・中企庁の動きに注目している。

令和6年6月13日備考

 令和6年6月10日、航空法を所管する国交省航空局より、航空法第2条第22項関係の無人航空機の定義に関する公権解釈について、新たな限定を付して解釈する旨が公示された。

 これによれば、無人航空機とは、「・・・構造上人が乗ることができないもののうち」、と限定して以後整理されることとなった。これにより、今後はドローンは空飛ぶクルマとは航空法令上はカテゴリを分けることになると思われる。

 したがって、本原稿の本文うち、該当部分の記述のみを削除するとともに、引用元の出典に航空局の新解釈に関する安全部無人航空機安全課長通達を追記する修正を令和6年6月13日付で行った。

引用元 省力化投資補助金 web製品カタログ
https://shoryokuka.smrj.go.jp/product_catalog

号外かわら版 中小企業省力化投資補助金:申請下限50万円から(2月12日執筆)
https://gxf-gogai.com/?p=167

号外かわら版 省力化投資補助金:第1回公募スケジュール公表(6月8日執筆)
https://gxf-gogai.com/?p=373

国空無機第 19380 号 国交省航空局安全部無人航空機安全課長発 無人航空機に係る規制の運用における解釈について
https://www.mlit.go.jp/common/001303820.pdf

Follow me!

省力化投資補助金を活用しやすいものにするために” に対して2件のコメントがあります。

コメントは受け付けていません。