契約書類を”代理人として作成”に契約締結代理は含まれるか?
行政書士法第1条の三第1項第3号には、「行政書士が作成することが出来る契約その他に関する書類を代理人として作成すること」という定めがある。
この「代理人として作成」とは、法令用語としてはどんな意味合いを含むのか?いわば行政書士の代理権の範囲にかかわるこの問題。みなさん大変興味関心のあるところでしょう。
先の原稿で挙げた「詳解」57頁に、行政書士法を所管する総務省の公権解釈がこのように書かれている。「ここでいう「代理人として」とは、契約等についての代理人の意であり、・・・行政書士が業務として契約代理を行いうるとの意味を含むものである。この規定により、行政書士は契約書に代理人として署名し、弁護士法72条の規定に抵触しない範囲では、契約文言の修正等を行うことができることとなる。」
なお、弁護士法72条の規定に抵触しない範囲とは、先の原稿で詳しく見たように、法的紛争性のある法律事件に関する法律事務を除く、ということである。すなわち事件性のない法律事務の範囲で、ということになる。
さらに、東大法学部卒の行政法学者で東京都立大学名誉教授の兼子仁博士も新13版行政書士法コンメンタール50頁で、「本号の業務は契約書文言の代理確定という範囲であるが、・・・本号の規定付帯的に”契約締結代理”が合法的な行政書士業務たりうる」と明記している。
まとめると、行政書士法を所管する総務省の公権解釈などによれば、本号は単に代理作成することだけでなく、契約締結代理を行政書士が行える点が含意されているのである。
●参考文献
「詳解 行政書士法第5次改訂版」、地方自治制度研究会編、ぎょうせい、令和6年3月25日発行
「行政書士法コンメンタール新13版」、兼子仁、北樹出版、令和5年5月15日発行