令和6年の年頭にあたって
令和6年は元旦に能登半島地震で震度7の揺れと津波・火災災害が、2日に羽田空港で日航機と海保機が滑走路上で衝突するという痛ましい事故が立て続けに起こりました。お見舞いと哀悼の意を表さずにはいられません。
羽田空港滑走路上で航空機衝突に至った原因は単一ではなく、複合要因が重なって発生したと考える視点が必要ではないかと思います。単に管制交信の聞き間違いが原因だったと済ますのではなく、仮にヒューマンエラーが原因だったとしても、なぜそのようなエラーが発生したか、仮にエラーが発生しても他に事故を防ぐ防御の手立てはなかったか、その防御措置は今回機能したか、そこまで徹底した検証が求められます。航空事故調査官による調査が行われていますが、複合要因の本質にまで迫ってもらいたいと思います。
また、今回航空事故調査チームとして、英国や仏国政府からも調査官チームが派遣されます。英国は事故機が搭載していたロールスロイス製エンジンの製造国です。仏国は事故機の機体製造国であり、メーカーであるエアバス社が本社を構えています。いずれも、日本側主体で行う事故調査に技術的な観点から調査に協力すると言います。
外国政府の動きではありますが、滑走路上の事故であったにもかかわらずこの当事者意識を持った動きの速さは特筆すべきであると思います(特に、仏国は事故当日に即座に表明)。というのも、今回の映像を見ると、火の回りがとても速かったという印象を持ちます。火勢の原因はこれから明らかになると思いますが、一説には、エンジンの高温排熱が燃料に引火したとの見方があります。仮にそうだとすれば、事故発生時に燃料を機体経路途上で瞬時に遮断する方法、燃料配管のキャビン回りの配置方法、難燃材の素材選定や配置方法、エンジンの冷却方法など、被害を最小限とする技術的改良や開発研究、その知見を行政規制に加えていく大仕事が待っていると思います。
また、機内アナウンスのシステムがダウンして客室乗務員が機体後方の脱出ドア開放の機長判断を仰げず、最後は現場判断でドアを開け間一髪のところで乗客は奇跡的に脱出できたとの報道もあります。アナウンス設備が衝突の衝撃でダウンしたのであれば、その対策や意思決定方法の取り決めも必要でしょう。
機体製造国ではない日本の当局としては、派遣された外国政府調査団からの技術的な情報提供支援も受けながら、航空安全で二度と類似の事故を起こさないための万全の制度設計を講じていく必要があると思います。