消滅可能性自治体と地方自治
今日は憲法記念日で、全国各地で改憲是非を問う集会の様子が報道されている。是非はさておき、ここではニュートラルな立場から憲法第8章の地方自治について考えてみたい。
地方公共団体は、議事機関として議会を設置し(地方自治法上は町村総会でも可)、長や議員は住民の直接選挙で選ぶことになっている。また、財産管理権や条例制定権があり、これらは地方自治の本旨、すなわち住民自治と、団体自治に基づく。特に、団体自治は地方自治が国家から独立した団体(地方公共団体)に委ねられるという自由主義的・地方分権的要素であると言われている。
ところで、4月24日に民間シンクタンクの人口戦略会議(議長:日本製鉄名誉会長)は、2020年から50年の30年間で、子どもを産む中心の世代となる20~39歳の女性が半数以下に減少する自治体は「消滅可能性」があると定義し、「消滅可能性自治体」を公表した。
その報告書によると、調査対象の40%を越える744自治体が「消滅可能性自治体」とされたという。
消滅可能性がある自治体の一覧は引用元を参照いただくとして、仮に4割を超える自治体が今後30年間で事実上消滅するとなれば、憲法の崇高な地方自治の本旨の理念を堅持するためには、これから地方自治のあり方を抜本的に見直すための議論を避けることは出来ないだろうと思う。
昔から道州制の導入を主張する勢力もあるだろうし、現在の自治体は維持したまま、例えばごみ処理場の建設や受け入れ等の特定の行政サービスを、複数の広域自治体で事務負担する広域連合を組織する方法を主張する勢力もあるなど方法論は様々あると思う。
その一つには、基礎自治体の規模を今よりもさらに拡大すること、すなわち市町村合併も有効な手段となりうると考える。合併には、飛び地合併や越境合併の形態も排除すべきではなく、生活圏が同じ自治体同士は広く認める方がいい。
平成の大合併では3,232あった市町村数が現在は1,718と、約半数になった。国庫補助負担金改革、税源移譲、地方交付税改革をその内容とする三位一体改革や合併特例債などのニュースを聞き覚えのある方も多いと思う。これらは時限措置で現在は廃止されている。また、これらの施策すべてが目論見通りうまくいったかは検証が必要だろう。
しかし、再び合併のメリットが得られるよう国で令和の大合併の制度設計、つまり新たな財政措置を講じたり、権限委譲の議論を開始してもよいように思う。政令市の要件等をさらに緩和し、例えば合併で45万人都市になれば政令市とするなども一案である。
平成の大合併では当初の合併後市町村目標数は1,000であったが、その数からみるといまだ倍近くの市町村が残っていることになる。少子化、人口減少社会を見据え、よりよい地方自治のあり方を議論することは国政の責任であると思う。
●引用元 FNNプライムオンライン 【全744自治体リスト】「消滅可能性自治体」を一挙公開…北海道から鹿児島まで 出産年代の女性人口が半数以下に 日光市や草津町も
https://www.fnn.jp/articles/-/690154
朝日新聞 消滅可能性自治体マップ 消滅可能性自治体の一覧
https://www.asahi.com/special/population2024/list
総務省 広域連合
ttps://www.soumu.go.jp/kouiki/kouiki1.html
総務省 平成の大合併について
https://www.soumu.go.jp/gapei/pdf/100311_1.pdf