日英伊国際共同開発の次期戦闘機GCAP模型ファンボロー展示に思ふ

 次期戦闘機GCAPの実物大模型が英ファンボロー航空ショーで展示された。第6世代の戦闘機として、デルタ翼形状で、ステルス性と情報リンク性、機動性に優れた設計となるようだ。

 この開発プロジェクトは日英伊の国際共同開発である。日本の戦闘機開発ではアメリカ以外と共同開発される初のケースで、大変注目している。

 というのも、先日英国で発足したキアー・スターマー新首相率いる労働党新政権が、この次期戦闘機の国際共同開発PJから離脱する可能性を匂わせていたためだ。

 このPJの日本側主契約企業である三菱重工業は、このPJが始まる前、MRJ(のちスペースジェットに改称)開発事業を行っていた。ロシアによるウクライナ侵攻の発生(2022年2月24日)など、日本を取り巻く国際情勢の急激な変化があり、異次元レベルで防衛力を強化する必要性に迫られた。F-2後継の次期戦闘機開発の必要性はローンチ時の耐用年数等からある程度言われていたことではあるが、国際情勢の急激な変化を受けて開発の緊急度が増し、このGCAPに結実していると見て取れる。このため、GCAPも抜本的防衛力強化政策の一つと考えていいだろうと思う。

 ところで、国内の主要な防衛産業は、米国の防衛産業とは異なり、軍産複合体で同じ会社が軍用機も、民間機も、その他の防衛装備品も民生品も開発している。MRJ事業は、みなさん方もよくご存知の通り、その後大変残念ながら開発中止が決定されたわけである(2023年2月7日)。真相は語られていないが、実際のところは、会社が巨大な軍産複合体制のために、このGCAPと、MRJと、二正面突破作戦で自社内の航空機の開発資源を振り分けるだけの余力がなく、GCAPに全リソースを集中させるべきと取締役会で判断された側面も少なからずあっただろうと考えている。国防優先という国益の観点でいえば、それはそれで極めて合理的な判断であり、MRJが不遇だった面も否めないと思う。

 但し、MRJ事業は型式証明取得に最大の課題を抱えていた。MRJはかつて、今回と同じファンボローショーの初展示飛行で、旅客機離れした短距離離陸、離陸後の急上昇、急旋回性など、優れた機動飛行パフォーマンスを実際に示していたわけである。仮に、MRJが軍用機であれば優れた評価を得ただろうが、最終的には民間機に必要な商用型式証明が取れなかった飛行機として、解体されるにいたってしまう。

 GCAPの今にちが、仮にMRJ事業中止の犠牲の上にあると見るなら、ファンボローでのMRJの在りし日の飛行の勇姿を脳裏に焼き付け、今後他国との国際共同開発のあり方に依存せずとも、何が何でも開発を成功させなければならないと思う。世界中から、日本の飛行機作りの本領が試されている。

引用元:NHK 英で航空ショー開幕 日英伊共同開発の次期戦闘機の模型を公開(2024.7.23)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240723/k10014519791000.html

CBCニュース MRJがファンボロー・エアショーで初のデモ飛行 イギリス(2018.07.17)

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